羅生門 芥 川 龍之 介 ある日の暮方の事である一人の 下人げにんが羅生門らしょうもんの下で雨やみを待っていた 広い門の下にはこの男のほかに誰もいないただ所々 丹塗にぬりの剥はげた大きな円柱まるばしらに蟋蟀きりぎりすが一匹とまっている 羅生門が朱雀大路すざくおおじにある以上はこの男のほかにも雨やみをする市女笠いちめがさや揉烏帽子もみえぼしがもう二三人はありそうなものであるそれがこの男のほ
河童……芥川龍之介どうか Kappa と発音してください 序 これはある精神病院の患者――第二十三号がだれにでもしゃべる話である彼はもう三十を越しているであろうが一見したところはいかにも若々しい狂人である彼の半生の経験は――いやそんなことはどうでもよい彼はただじっと両膝(りょうひざ)をかかえ時々窓の外へ目をやりながら(鉄格子(てつごうし)をはめた窓の外には枯れ葉さえ見えない樫(かし)の
第 25 卷第 6期 唐 山 师 范学院学 报 2003年 11 月 Vol. 25 Journal of Tangshan Teachers College Nov. 2003 ────────── 收稿日期:2003-07